Tips2:安静時心拍数測定のすすめ
自分の身体の声に耳を傾けることの重要性は前回説明しました.
今回はその具体的な方法として,安静時心拍数測定をご紹介します.
まず,心拍数とは何か?
心拍数とは,1分間あたりの心臓の拍動数のことです.
では,なぜ心拍数を測る必要があるのでしょうか?
心拍すなわち心臓の拍動は,交感神経と副交感神経という自律神経によって調節されています.
簡単に述べますと,交感神経の働きによって心拍数は増加し,副交感神経の働きによって心拍数は減少します.この自律神経からの刺激によって,無意識のうちに心拍数が増加したり減少したりする訳です.例えば,面接など緊張した場面では,交感神経が優位に働いているため,心拍数は増加します.
よく「緊張で口から心臓が出てきそうなほどドキドキする」のはこのためです.
さて,ストレスや疲労によって,自律神経の調節が上手くいかない場合,安静時の心拍数(例えば椅子などに30分間安静に座っていた時の心拍数)が極端に多くなったり,少なくなったりすることがあります.
この心拍数のメカニズムを利用して,普段のコンディショニングチェック(健康管理)を行なうというのが今回のテーマです.
毎回(毎日)同じ条件下で測定した心拍数を記録し,その変化からコンディショニングチェックをしてみましょう!
では,その具体的な方法について説明します.
いつ測るのか?
コンディショニングチェックなどで心拍数を測る際には,安静時の心拍数を測ることが一般的です.スポーツ科学における研究などで安静時心拍数を測る際は,椅子に座った状態で30分間安静にした後に測ることが一般的です.心拍数は自律神経のみならずホルモン分泌などにも影響を受けるとされています.従って,これらが落ち着くであろう30分間安静にした後に心拍数を測る訳です.
しかしながら,私たちが日常生活の中で30分間の安静時間を確保することは至難の技であり,現実的ではないのも事実です.研究においては,研究対象となるデータの信頼性を確保することが必要であるため,先ほど述べたように厳密に心拍数を測ることが必要ですが,私たちが自分自身のために,特にコンディショニングチェック(健康管理)を行なうために心拍数を測る上では,そこまでの厳密性は必要ないといえます.
つまり,毎回(毎日)同じ条件(同じ時間,同じ場所,同じ姿勢)で測った心拍数を記録し,主観的な疲労感などを同時に記録するだけでも個人のデータとして十分活用できる訳です.
この時一番重要なことは,ただ一つ,毎回(毎日)同じ条件で測るということだけなのです.朝起きてすぐでも結構ですし,お昼休みに5分程度座って安静にした後でも結構ですし,トレーニングを開始する前のちょっとした時間でもOKです.
どうやって測るのか?
心拍数は,一般的に頚動脈で測ることが良いとされています.首筋の喉仏の側面上部辺りに指を2本当ててみましょう.ひときわ大きく拍動を感じ取れる箇所があります.その部位を覚えておきましょう.心拍数の測定は,首筋に指を当てながら時計とにらめっこし,1分間数えることが理想ですが,1分間もじっとしてられないという人や,どうしても数え間違えをしてしまうという人は,10秒間数えて6倍しても良いですし,20秒間数えて3倍してもOKです.
でも,理想は1分間です.
どのようにチェックするのか?
毎回(毎日)同じ条件(同じ時間,同じ場所,同じ姿勢)で測った心拍数を記録していきます.日記などをつけている人は日記に記入していってもよいでしょう.日記なんかつけてないよ!という人は,例えばカレンダーに記入していってもOKですし,スケジュール帳の片隅に記入していってもOKです.
要は毎日記録することが大事です.
また,心拍数を測り終わった直後に,その時の疲労感なども合わせて記録しておきます.
疲労感は特に指標などを用いなくても大丈夫です.疲れているのか,疲れていないのか,それだけで十分です.分からないでもOKです.要は1日に1回は,自分の身体の疲労度合いを自分でチェックすることが大事です.
で,この疲労感も心拍数同様に記録していく訳です.また,出来れば飲酒の有無や,風邪などの病気にかかった記録など普段の生活のちょっとした出来事を記録していきます.体重や睡眠時間なども良いデータになります.ただ,重要なのは毎回(毎日)記録することですから,あまり欲張らず毎回(毎日)記録できるものを選びましょう.
そして,1週間毎や1ヶ月毎など,節目節目で,この記録したものを見返す訳です.
すると,ある時,心拍数の変化(極端に心拍数が高い日があった,極端に心拍数が低い日があった など)に気づくはずです.そうしたら,この日の前後で日常生活で何が起きたのか(例えば,前日に飲酒をした.仕事であまり寝る時間がなかった)を振り返り,どのような状態だと(つまりどのような生活を送ると)どのように安静時の心拍数が変化するのかを把握していく訳です.
このようなチェックを繰り返していくうちに,自然に安静時の心拍数を測るだけで,いま自分がどのようなコンディションにあるのかが分かるようになってくるという訳です.
このチェックは,1日5分もあれば終わる作業です.
こんな簡単なことから始めてみませんか?