Vol.1:ストレッチング再考_1
皆さんは、スポーツやトレーニングを行なう前のウォーミングアップ時にストレッチングを実施しているだろうか?
「ついつい面倒くさくて・・・」そんな声が聞こえてきそうだが・・・
かつてウォーミングアップ時には、反動を使ったいわゆる「柔軟体操」と呼ばれるストレッチングが一般的に行なわれていた。しかし、近年では、この「柔軟体操」と呼ばれていた反動を伴うストレッチングは「伸張反射」を引き起こし、筋肉を傷める可能性があるとされ反動を伴わないストレッチングである「スタティックストレッチング」が推奨されている。伸張反射とは、筋肉が過度に引き伸ばされないように、反射的に筋肉が縮む生理的な反応であるが、反動によって急激な伸張反射が引き起こされると筋肉が急激に縮むので筋肉を傷める可能性が高いといわれている。そこで、伸張反射を引き起こす可能性が少ない方法として、「スタティックストレッチング」がボブ・アンダーソンによって提唱され、現在ではこのスタティックストレッチングが一般的に「ストレッチング」として行われているという訳だ。
ストレッチングは主として柔軟性を高める方法として知られ、柔軟性を高めることはスポーツのパフォーマンス向上を図る上で、また、健康の維持・増進を図る上で重要な要素であるといわれているが、柔軟性は大きく「静的柔軟性」と「動的柔軟性」の2つに分類されることを皆さんはご存知だろうか?
そして、スポーツやトレーニングを行なう前には静的柔軟性ではなく動的柔軟性を高める必要があるということをご存知だろうか??
静的柔軟性とは、簡単に表現すると「動きを伴わない柔軟性」であり、いわゆる一般的に「身体の柔らかさ」として評価されるものである。一方の動的柔軟性とは、簡単に表現すると「動きの中で発揮される柔軟性」であり、いわゆる「動きの柔らかさ」として評価されるものである。
そして、スポーツやトレーニングを行なう前には、静的柔軟性よりもむしろこの動的柔軟性を高めておくことが無駄なケガを引き起こさないために重要となる。最近の研究結果では、スポーツやトレーニング前の過度なスタティックストレッチングの実施は、パフォーマンスの発揮に貢献しないばかりか、パフォーマンスの低下を引き起こす可能性が高いことが数多く報告されている。なぜなら、スタティックストレッチングは、神経-筋を抑制する傾向が強く筋肉が弛緩しすぎてしまうのでスムーズな動作が獲得しにくいと考えられるからである。一方で、ダイナミックストレッチングは、神経-筋を促通させることが可能であり、筋の弾性力の向上、ボディバランス向上、動作スピードの向上などの効果が得られるといわれている。
これらのことから、スポーツを行なう上で高いパフォーマンスを発揮するためや効果的なトレーニングを行なうために、ウォーミングアップ時にはダイナミックストレッチングによって動的柔軟性を高めておく必要があるという訳だ。
とうことは・・・
かつて一般的に行われていた「柔軟体操」は間違っていないということになるのだが、かつて行なわれていた柔軟体操は反動が強すぎる傾向があり、場合によっては筋肉を傷めやすいというのもまた事実であるといえよう。厳密にいうと、柔軟体操は「バリスティックストレッチング」に相当し、ダイナミックストレッチングとは異なる。(バリスティックストレッチングは反動を使いながら身体を動かしストレッチングを行なうのだが、ダイナミックストレッチングは、反動を使わず身体を動かしながら行なう。)
しかしながら、実際には、バリスティックストレッチングとダイナミックストレッチングの線引きは難しいことも多いため混合した形式で実施されることが多い。従って、過度に反動を使わず、徐々に身体の動きを大きくしながら行なうことに留意すれば、トレーニング現場においてはバリスティックストレッチングとダイナミックストレッチングを厳密に区別する必要性はないといえる。
では、スタティックストレッチングは全く必要ないのだろうか?
決してそうではない。
近年、筋肉は短縮した状態(縮んだ状態)で、刺激を加えるとマイナスに作用することが明らかにされつつある。つまり、筋肉はその生理的な長さが保たれて初めてその機能を発揮するということになるのだが、スポーツやトレーニングを行なうと筋肉が一時的に短縮した状態になり、その状態を放置してしまうと翌日以降のトレーニングに悪影響を及ぼすということになるのだ。従って、トレーニング終了後には短縮した筋肉を元の長さに戻しておく必要性があり、クールダウン時にはしっかりとスタティックストレッチングを行なう必要性があるという訳だ。
ということで、皆さんもダイナミックストレッチングとスタティックストレッチングを効果的に使い分けて頂きたい。