Vol.6:自然体で走る!その5
前回、「上虚下実」における「上虚」、ならびに「末虚中実(注)」の「末虚」は、上半身をリラックスさせるということを意味し、上半身をリラックスさせるためには肩甲骨を中心とする肩甲帯の動的柔軟性を高めることが重要であると説明させて頂いた。
そこで、今回は肩甲骨を中心とする肩甲帯の動的柔軟性を向上させるためのアプローチについて考察してみたい。
肩甲骨を中心とする肩甲帯は可動性・安定性(支持性)・運動性に優れ、上半身の動きの能力を向上させる上で重要な部位となる。
そして、特にランニング動作における肩甲帯の動きは、実は脚の運びをスムーズにする上でも非常に重要になるのだ。
例えば、胸の前や背中で腕や手を組むなど肩甲骨を固定した状態で走ってみて欲しい。
ストライドが伸びず走りづらいことに気付いて頂けるだろう。
このことからも分かるように、肩甲帯の可動性の低下はストライドにも影響を及ぼし、ランニング効率を低下させる原因にもなるのだ。
そして、肩関節に関連する胸部筋群の可動性の低下は胸郭の可動性の低下をも引き起こし、呼吸筋にも影響を及ぼすため、さらにランニング効率が悪化する可能性が高くなる。
これらのことからも、肩甲帯の可動性、すなわち動的柔軟性を高めることはランニングパフォーマンスを向上させる上で重要な要素となることがお分かり頂けると思う。
肩甲帯の動的柔軟性を高める上で、理解しておきたいポイントは、肩甲骨の動きである。
肩甲骨の動きは、基本的に「挙上・下制」「外転・内転」「上方回旋・下方回旋」の6ターンとなり、
肩甲帯の動的柔軟性を高めるためには、これら基本6パターンの可動性を高める必要性があるといえる。
以上をポイントに、今回は、日常生活の中で取り組むことが可能な肩甲帯のダイナミックストレッチングを以下に紹介する。
@スキャプラコントロール_前方挙上
目的:
僧帽筋上部ならびに大菱形筋&小菱形筋の動きを改善させ肩甲骨の前方挙上動作を引き出し肩甲帯の動きをスムーズにさせる。
方法:
・肩関節(肩甲上腕関節)を約150度屈曲ならびに30度外転させた状態(ショルダープレスのフィニッシュポジションに近い姿勢となります。)で腕全体を挙上、下制する(前方挙上動作)。
・この時肘は曲げないようにする。
・腹圧を高め腰部にストレスをかけないように行なう。
・15〜20回×2セット行なう。
Aスキャプラコントロール_後方挙上
目的:
僧帽筋上部ならびに大菱形筋&小菱形筋の動きを改善させ肩甲骨の後方挙上動作を引き出し肩甲帯の動きをスムーズにさせる。
方法:
・肩関節を約30度屈曲ならびに30度外転させた状態(ダンベルシュラッグのスタートポジションに近い姿勢となります。)で腕全体を挙上・下制する(後方挙上動作)。
・この時肘は曲げないようにする。
・腹圧を高め腰部にストレスをかけないように行なう。
・15〜20回×2セット行なう。
Bスキャプラコントロール_外転
目的:
大胸筋、前鋸筋の動きを改善し肩甲骨の外転動作を引き出し肩甲帯の動きをスムーズにさせる。
方法:
・仰向けの状態になりベンチプレスのスタートポジション(腕を挙上した状態)から、肩甲骨を外転・内転させる。この時肘は曲げないようにする。
・腹圧を高め腰部にストレスをかけないように行ないます。
・肩甲骨の動きが意識出来るようであれば、肩甲骨内転動作をより引き出せるようにバランスボールの上で実施する。
・15〜20回×2セット行なう。
Cスキャプラコントロール_上方回旋(ショルダープレス)
目的:
三角筋前部・中部、僧帽筋上部・中部、前鋸筋等の動きを改善し、肩甲骨の上方回旋動作を引き出し肩甲帯の動きをスムーズにさせる。
方法:
・ショルダープレスの動作を行なう。
・腹圧を高めて腰部にストレスをかけないように行なう。
・また、僧帽筋が働かないように(首をすくめないように)注意して行なう。
・15〜20回×2セット行なう。
以上のダイナミックストレッチングだけでは、肩甲骨の全ての動きをカバーすることは出来ないが、それでも十分な改善がみられるはずである。
是非一度お試しあれ!
(注)野口が作った造語
参考文献:
斉藤 孝,自然体のつくり方,(2001)太郎次郎社,東京 pp44-54.