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高橋選手と尾方選手

今年の8月に行われる世界選手権の代表選考レースの一つである東京国際マラソンで高橋健一選手(富士通)が優勝しました.

レースは,25kmまで世界最高記録を上回るペースで展開され,32km付近で高橋選手がスパートをかけ独走体制に入り,その後,35kmまでは日本最高記録を上回るハイペースで進みました.
しかしながら,35kmから40kmまでの5kmでそのペースが落ち,世界選手権代表内定条件である2時間9分59秒に僅かに届かず2時間10分51秒というタイムで高橋選手が優勝しました.

今回のレースで,特筆すべき点は,日本人選手を中心に30km付近まで世界最高記録を上回るペースで展開された点と,そのようなハイペースのなか,30km過ぎから高橋選手が積極的にスパートをかけた点であると私は思います.
結局,高橋選手は35kmからの5kmでペースが落ちましたが,世界最高記録を上回るペースで30kmを走行し,30km過ぎからペースアップを図ろうという積極的なレース運びは,最近の男子マラソンレースにおける日本人選手にはみられないものであったと思います.

最近のマラソンレース,特に世界最高記録が更新されたレースでは,レース中盤から後半にかけて走行ペースが上がる傾向がみられます.昨年12月に更新された男子日本最高記録についても然りでした.また,女子でも高橋尚子選手を筆頭に同様の傾向がみられます.

これまでのマラソンレースにおける定石は一定ペースを守るというものであったと思います.1988年にロッテルダムで樹立された,当時の男子世界最高記録は正確なほど一定ペース(5km=15分程度)が刻まれていました.しかしながら,1999年にシカゴで樹立された現在の男子世界最高記録は,30km過ぎから明らかにペースが上がっています.また,30kmまでのペースも決して遅いものではなく,1988年当時の世界記録とほぼ同様のペースで展開されています.

このように,今後のマラソン競技はよりスピード化が進み,レース中盤からレース後半において,いかにペースアップが出来るかということが成功を収めるための大きな鍵になるのではないでしょうか?

すなわち,30kmまでを前半とし,その前半をハイペースで走行し,30kmから40kmまでの中盤でさらにペースアップを図り,”上がり”といわれる残り2.195kmの後半でラストスパートというレース運びが出来る選手の育成が必要かと思います.(高橋尚子選手はこのようなレース運びが出来る選手ではないでしょうか?)

そのような意味からも,今回の高橋健一選手のレース運びは,まだまだ課題点はあるものの今後を大いに期待させるものであったと思います.

しかしながら,忘れてはならないは尾方選手(中国電力)の存在です.尾方選手は今回惜しくも39km付近でリタイアしてしまいましたが,高橋健一選手が30km過ぎからスパートをかけた一つの要因に尾方選手の存在があったかと思われます.
もし,30km過ぎで尾方選手が脱落してしまっていたら,高橋選手はあそこでスパートをかけなかったかもしれません.あそこでスパートをかけなければ2時間10分を切れていたかもしれないという見方も出来ますが,やはり,今回のような積極的なレース展開が今後のマラソン競技においては重要だと思います.

そのような意味からも,尾方選手にも大きな拍手を送りたいと思います.


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