トレーニング概論
Vol.6:トレーニング理論・方法 Part4「パワートレーニング」

前回は「スピードトレーニング」について説明しました.今回は「パワートレーニング」についての説明です.

(2) パワートレーニング
「あの人凄いパワーの持ち主だね」.
普段の生活の中でこのような言葉を良く耳に,あるいは口にすることがあるかと思います.
では,パワーとは一体何のことでしょうか?

パワーとは一般的に

力×速度

で表されます.

筋肉のレベルで考えてみますと,筋パワーとは筋が発揮した力と筋の収縮した速度の積で表すことができます.

このように考えてみますと,パワーを高めるためには,「力」と「スピード」の両方を高める必要性があると考えられます.しかしながら,ここで厄介な問題が生じることになります.

「力」すなわち「筋力」を高める方法としては,ウエイトトレーニングが最も効果的な方法であるといえます.
また,「スピード」を高める方法としては,同様にスピードトレーニングが最も効果的な方法であるといえます.
しかし,重いウエイトなど(負荷)を課した状態では,高いスピードを発揮することはできませんし,逆に,高いスピードを発揮させるためには,重いウエイトを課すことはできません.

従って,ウエイトトレーニングでは,パワーを高めるために必要とされる十分なスピードを確保することができず,パワーを高めることができない可能性があります.
また,スピードトレーニングでは,パワーを高めるために必要とされる十分な負荷が確保することができず,パワーを高めることができない可能性があります.
つまり,パワートレーニングを行う上で,あまり重いウエイト(負荷)を用いてトレーニングしてしまうと,筋力を高めるために特異的なトレーニングになってしまう可能性がありますし,軽すぎるウエイト(負荷)では,スピードを高めるために特異的なトレーニングになってしまう可能性があるということです.

従って,パワートレーニングを考える上では,「過負荷性」の原則をどう考慮するかということが重要な要素になることが考えられます.

このことについて具体的に「垂直飛び」を例にとり説明したいと思います.

「垂直飛び」は全身を使った瞬発的な運動であり,パワーを評価するためのテストとして用いられている運動です.
「垂直飛び」の跳躍高を高める,すなわちパワーを高めるためにはどうしたら良いでしょうか?

これまでの多くの先行研究では,「垂直飛び」を連続して何回か行う方法,ウエイトなど(負荷)を担いで(持って,身に付けて)「垂直飛び」を行なう方法であることが報告されています.

では,「垂直飛び」を連続して何回か行う方法,と,ウエイトなど(負荷)を担いで(持って,身に付けて)「垂直飛び」を行なう方法では,どちらの方法が良いのでしょうか?

「垂直飛び」を連続して何回か行う方法は,「垂直飛び」そのものが過負荷になっているのであれば,効果があるといえます.
つまり,バレーボール選手は普段より頻繁にジャンプ動作を行なっているため,「垂直飛び」そのものが過負荷にならず,効果が上がらないと考えられます.
一方,ウエイトなどを担いで「垂直飛び」を行なう方法では,そのウエイトが重過ぎた場合は,効果があがらないことが先行研究などで報告されています.

これらのことから,パワートレーニングを行う上で,「過負荷性」の原則が如何に重要であるかということがお分かりかと思います.

では,パワートレーニングを行う上で用いる負荷(ウエイト etc)はどの程度が適切なのでしょうか?

これまでの先行研究から,最大パワーが出る時の「力」は最大筋力の1/3〜1/2に相当することが報告されており,また,最大パワーが発揮できる持続時間は約10秒程度であるといわれています.
従って,最大筋力1/3程度の負荷(ウエイト)を用いて,約10秒程度の運動を全力で行うことが最も効果的な方法であると考えられます.

このように,「パワートレーニング」は実施するのが難しいトレーニングの一つであるといえます.
従って,「パワートレーニング」そのものに加えて,パワーを構成する要素である「力」を向上させるための「筋力トレーニング」,「速度」を高めるための「スピードトレーニング」を合わせて実施する,複合的なトレーニングも効果的であると考えられます.

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